拡散/後期
 

笑うでもなく、どちらかが小さく鼻を鳴らした。

「でもさ、ああやって形を保ってる時間って、ほんの少しだよな。」

「出た瞬間から、崩れる準備してる。」

「俺らもな。」

「お前はな。」

「違うのか?」

煙は、さっきより少し揺れ始めている。

「なあ。」

「なんだ。」

「もし、あの煙がさ、途中でやめたいって思ったらどうなる。」

「煙に意思はない。」

「比喩だよ。」

「だったら、意思がないから続いてるんだろ。」

遠くでトラックの音がする。
煙の根元では、見えない火が、まだ何かを燃やしている。

「結局さ、あれ、何燃やしてんだろう。」

「いらなくなったものだろ。」

「全部か。」

「多分な。」

二人はしばらく黙って、白い線が空にほどけるのを見ていた。
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