拡散/後期
 
煙突から、まっすぐ煙が立っていた。
冬の午後。工場の裏手で、ふたり立ち止まる。

「今日は素直だな。」

「何が。」

「煙だよ。曲がらない。迷わない。出たら、出っぱなしだ。」

「風がないだけだろ。」

男はポケットに手を入れたまま、空を見ている。

「俺らも、ああなら楽だな。」

「燃やされるのか。」

「燃やされた結果だよ。」

煙は途切れず、空の薄青に溶けていく。

「なあ、あれって、上に行ってるのか?」

「上に行ってるように見えるだけだ。」

「じゃあ、どこに行く。」

「拡散。」

「夢がないな。」

「物理だ。」


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