凄いぞ!TOP10 「立春前」本田憲嵩/室町 礼
 
主体の生の危機や、どうにもならない孤立感、罪悪感、恐怖といっ
たものには届いていない。
蜘蛛を殺したのか、ただ落としたのか、その行為に対する「ぼく」の
倫理的な揺れや、世界との関係の変化がほとんど問われていない。
「ぼくが触れたことで、春に見えたものが冬の冷酷さとして現れた」
という構図を徹底すれば、かなり鮮烈な自己表出になりうるのに、
「きれいな感傷」で止まっている。

そして?「この詩がどこまで世界に届きうるか」という軸。
率直いわせてもらうと経験があまりにも「個人的な情緒」に閉じている。
立春前の小春日、蜘蛛、冬の冷酷さ──読者は「わかるよ、その感じ」
と共感はでき
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