一日半/田中教平
 

 ユウスケはカナの寝室で、床に横になっていた。古いブルースを小さな音で流して聞いていた。
「あのさ、ロックだと割と方向性が分かるんだけど、ブルースになると方向性が分からないよな」
「方向性?」
「ブルースってさ、演奏していると、演奏している奏者も、ブルースに染まってゆくって事が言えると思うんだな」
「ふうん」
「ロックだと、演奏者と聴衆の一方通行同士になりがちなんだけれど、ブルースの場合はどうだろうか。まずは演奏者が自分自身で自分のブルースにスウィングするというか、ノラなきゃならない。それはロックの典型的なエイトビートに自身もノル、という事とはちょっとニュアンスが違う気がするな」
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