夜の散歩/佐々宝砂
東の空はうすあかい
あちらには街があって駅があって
こんな夜更けにも
時折は貨物列車や寝台列車が通り過ぎ
その音がここまで響いてくるのは
雨が近いからだろう
ぼんやりした常夜灯の光の下
とつとつと
草の名前をとなえてみる
かやつりぐさ
かたばみ
すぎな
よめな
いまわたしの足の下にあるのは
しろつめくさ
その白い花が
あまり清らかでもなく
首を伸ばしている
草ぐさはすでに露を含み
サンダル履きの爪先は
濡れてしまった
肌寒いので自分で肩を抱く
道に沿う三日月沼のどこかから
「お」に濁点をつけたような声がする
牛蛙だろう
あれはあれで恋を
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