河童伝・第六話「見返す水」/板谷みきょう
使わなかった”人の姿でした。
やがて、水面に、小さな揺らぎが戻ります。
空が映り、雲が流れ、村の灯が、ぼんやりと映りました。
それで十分でした。
川は、見返すことをやめたのです。
あるいは、“見返す必要がなくなった”のかもしれません。
その後、河童の話は、少しずつ語られなくなりました。
神にも、妖怪にも、教訓にもならず、ただの昔話として。
けれど、あの子は知っています。
水は、今も見ている。
人を裁くためではなく、
人が、自分自身を見るかどうかを、待ちながら。
だから川は今日も、
何事もなかったかのように、
静かに流れているのでございます。
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