河童伝・第六話「見返す水」/板谷みきょう
つもと同じ顔で流れていました。
……ただし。
水面には、誰の顔も映っていなかったのです。
空も、星も、村も、人も。
映らない。
あるのは、深さだけ。
人々は、初めて知りました。
水は、見るためのものではない。
映すためのものでもない。
“人が勝手に意味を映し込んでいただけ”なのだと。
怖れはありませんでした。
怒りも、裁きも、ありませんでした。
ただ、
……理解されなくても、在り続けるものの、静けさがあった。
あの子は、川に一礼しました。
名を呼ばず、願わず、意味も与えず。
その仕草は、初めて川を“使わ
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