河童伝・第二話「皿の水は誰のもの」/板谷みきょう
 
れた皿の欠片が、いつの間にか井戸端に置かれていたのです。誰が運んだのか、誰も覚えておりません。ただ、欠けた縁に水を注ぐと、溢れぬまま、いつまでも揺れていた。

その水を使うと、田はよく実りました。病も減り、家畜も倒れなくなった。村は次第に、その水を“ありがたいもの”として使い始めます。

ところが
その年の終わり頃から、人々は夢を見るようになりました。

水の底に立つ自分の姿。
皿を抱え、川に戻れず、空も仰げず、足元の土だけが崩れていく夢。

目覚めると、胸の奥に、理由のわからぬ渇きが残るのです。

ある晩、子どもが泣きながら言いました。

「井戸の中で、誰かが数を数え
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