河童伝・第二話「皿の水は誰のもの」/板谷みきょう
三郎が消えてから、村は確かに救われました。
ぬらくら川は牙を収め、堤は崩れず、田は実り、子どもらは裸足で川を渡るようになった。人々は言いました。
「河童三郎は、神さまになった。」
そう口にするたび、胸の奥が少し軽くなる言葉でございました。
けれども……川が静まった翌年の夏、村で奇妙なことが起き始めます。
井戸の水が、減らぬのです。
雨が降らず、川の水位が下がっても、井戸だけは満ちたまま。汲めば汲むほど澄み、しかも、飲めば胸の渇きだけが癒えぬ。腹も喉も満たされぬ、不思議な水でした。
村の古老が、ぽつりと言いました。
「……皿の水だ。」
あの割れた
[次のページ]
[グループ]
戻る 編 削 Point(1)