灯夜行/木立 悟
島を結ぶ浅瀬の夜を
かがやくゆがみの輪が照らす
ほつれつづけるふちどりが
わずかに時間を押しのけている
歩きつづける影のそばに
何かを取り去られたかのような
大きなひろさを見つけるとき
鏡の道の奥ゆきに
木々は斜めの虹の歌
ふたつ以上の季節に映る
明るい夜と枝の向こうに
低くまばらな草地があり
まばらな風に揺れている
小さくまぶたに届く音
目の下 頬の上のはばたき
夜と同じ色のはばたき
透明な板が空をまたぎ
空と空の間に満ちた
古い響きを分けている
こぼれたひとつのそのままが
水たまりになり 湖になり
新たな島のはじまりになる
小さな羽が打ち寄せて
鏡の花に触れてゆく
浅瀬に実る歌は金色
水は水に
波は波に沈みながら
空の板に爆ぜる火を見る
かがやきゆがむ輪をかかげ
遠い音を引き寄せるもの
透明に染まり透明になり
こぼれつづけるそのままたち
あふれては分かれ 虹を帯び
鏡から鏡へわたりゆく
夜から夜へわたりゆく
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