メモ3(今のこと、音楽、人間のこと)/由比良 倖
 
ける、と約束されていたとしても、痛みと恐怖が薄らぐ訳ではない。しかも鬱には終わりが見えないし、致命傷を負った血まみれの心を、誰ひとり、想像すらしてくれない。それに、死ぬまで鬱は治らないかもしれない。

僕は、大切な何かを、全て喪ってしまったと思っていた。心の中の火、すなわち、情熱や好奇心や、心の熱量。詩的な感覚。何もかも。昔はあった、確かなものが、完全に壊れたか、損なわれて、そして二度と帰っては来ない、と思い込んでいて、喪失の中の自分を生きる以外に、選択肢は何も無い気がしてた。けれどこの頃、案外そうではないのかもしれない、と思える時がある。ドラマみたいに、僕が自分自身を取り戻す決定的なシーンがあった訳じゃない。もしかしたら、僕の鬱は周期的なものでもあるのかもしれない。僕は僕の意思で鬱を治した訳ではないので、やはり運が良かったと言うしか無い。

過去に囚われず、未来を絶望視しないならば、僕は現在をそのまま、ありのままの、大袈裟に言えば、永遠としての今を生きられると思っていて、一瞬一瞬の現在を肯定し続けられるならば、人生はそう悪いものではないのかもしれない、って今は思ってる。
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