モノリス/岡部淳太郎
 
も耐えてそこに在りつ
づけてきた。それは無言でいながら、そのなかに多く
の歌を秘めている。それはその硬質な存在感によって
あらゆる芸術に取り上げられ大きな謎としてありつづ
けたが、それ自身がそれらに対して応えることは決し
てなかった。それは多くの時を潜り抜けながらそれら
の時を超越した存在でもあった。そしていつかの時の
行末でそれは、無言のうちに美しい歌を宇宙に向かっ
て発し始めるが、その時にはもう滅んでいるだろう人
という小さく儚いいのちは、それをまったく知らない
まま空から忘れ去られる。だが、そのことをそれも、
無限の空と同じくまったく悲しんでなどいないのだ。



(2025年12月)
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