真冬の虐殺/栗栖真理亜
 
少年はじっと地面を見つめていた
腰を落とし俯き加減で
灰色のアスファルトの地面を眺めていた

少年の目線の先を辿ってゆくと
硬い地面の上に何か黒い塊が見える
うっすら土埃を被った蟻だ
手も足も頭すらない黒い点のような蟻
それを少年はただじっと見つめていた

本来命が与えられていた頃は
蟻だった物体を静かに眺めている
何も喋らず静かに佇んだまま
蟻は動き出すことなく
少年に見つめられるままとなっていた

不意に少年は膝を伸ばして立ち上がる
そしてまるでタバコの火を消すように
片足をひねりながら蟻の体を足裏で潰した

よく見ると少年の瞳は涙で濡れていた
少年はしばらく自分が潰した跡を
涙目になりながら眺めていたが
なんども地面に足裏をなすりつけ
まるで気が他に移ったかのようにふいっと
目線を逸らしてそのままどこかに走り去った

蟻の死骸だったものは黒く地面にへばりつきながら
何か主張するでもなくそこにいた
踏み躙られながらも蟻は確かにそこに存在していた
何も変わらない濁り空の下で

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