花鶏/山人
冬。らしくもない日が続き、
雪山。らしくもない景観がある。
心は少し濡れていて、
少しほの温かい灯が欲しくなる。
得にも害にもならないため息がそこら中に散乱し、
それを眺める私はいささか年を取りすぎてしまった。
まだ借りてきた猫のような冬が、
か細い声で鳴いている。
餌になる寒さがまだ訪れていないのだ。
私はと言えば、
すげ替えられた首を差し替えて。
でもまだ接着剤は良くくっついていないんだ。
そうとう昔、
残雪がふんだんに残る時期に、
おびただしい、
何百という花鶏が、
近くでどよめくように鳴いていた。
膨大に残る残雪の上に、
敷き詰められた花鶏の群落。
爛れた、腐敗し始めた私の眼前に
確かに存在した現実。
私は何か、
意味不明な言葉を発していた。
それは、
旅をし続けた冬がもたらした、
一個の奇跡だったんだと
今にして思うのだ。
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