朝の雨への感謝/牛坂夏輝
 

自発的な肖像画を
雨の糸に期待する

私は
濡れることを
トロンボーン奏者の欲望として受け取り
そこに重苦しい持続を
過剰に置かない

円錐形の屋根の下に
いま透明な新聞紙が置かれる

ひとびとは挨拶する
ひとびとは魚を食べる

透明なドルフィンを探す

この雨は裏地のない偏見を優先する鳥たちの臓物の温度を持ち
湾曲した記憶の中の斜面の幸福をあらゆるものに関係させ
なおも晴れやかな刑罰を夢見ている

青年の皮膚は荘厳な吐息であり
締め付けられた保証書のくぼみから滲む
毒を持った調停者の悲しみである

雨は
投石器を洗わない
投石器の
劇団関係者を
一時的に変更するだけだ

その簡潔さに
ハープの音と
無数の波間の反射に
私は感謝する
何も語らず
しかし
確実に
霧の文法
草の文法
主観性を欠いた狂気の文法
夥しい数の顕微鏡を成立させた
この小さな制度に

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