抒情詩について/牛坂夏輝
 
最も遠い牡牛を見に行こう
インゲン豆の思想を持って
白鳥の内面を持って
大地の虫歯
お茶の先端に刺さる深く静かな悲しみ
誠実な熟読と
ヤマウズラの貞節な唾液を持って

今朝はグリーグの「二つの悲しい旋律」を聴いたのだ

修道院で種子を食べて
透明な微笑みのように彷徨って
「これから抒情詩を書きます」
と宣言しよう
水飲み場が目覚め
空中で叫ぶ挽き肉が目覚め
ブドウとトンネルの婚礼が目覚め
不毛な物思いが目覚める

迷路を予測し血統主義の強く残る仕事をし
木蔦に蜜蜂を留まらせてあげよう
壺の中のカスミソウ
その不可解な冷酷さ
その不可解な太陽系への執着
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