私たちは、いったい誰のために貧しいのか? /atsuchan69
視を掲げながらも、経済構造そのものより、事件や不祥事、わかりやすい対立構図を優先的に報じてきた。企業の内部留保や富の偏在は、個別の話題としては取り上げられても、社会全体の構造として継続的に掘り下げられることは少なかった。
代わりに強調されてきたのは、「国際競争に負ける日本」「外圧に苦しむ日本」「危機にさらされる日本」といった物語である。問題の原因は外部や時代の流れに帰属され、国内の配分構造への視線は意図せずとも弱められてきた。
戦争や大規模な危機は、この物語をさらに強化する。非常時には「まず耐えよ」「今は分配の話をする時ではない」という空気が広がり、富の所在や再配分の議論は後景に退く。
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