私たちは、いったい誰のために貧しいのか? /atsuchan69
 
距離を取り続けた結果、届く範囲が自ら縮小してしまったのである。マスコミの物語が社会を覆い、SNSがそれを反復する中で、詩は対抗言語になりきれなかった。

日本社会に存在するのは、「国は実は豊かだ」という事実と、「多くの国民は苦しい」という実感の同時成立である。これは矛盾ではない。豊かさをストックとして見えない場所にため込み、その存在を語らせない一方で、生活に直結するフローだけを細く管理することで成り立っている社会の姿だ。

貧しさは自然現象ではない。誰かが作り、配信し、反復してきた物語の結果である。いま問われているのは、誰がその物語を作り、誰がそれを広め、そして誰が沈黙してきたのか、という
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