赤冬/ただのみきや
立ち枯れた夏草に綿の花
朝の光に否応もなく
蒼い影を生み落とし
泣いて端から透けていく
でもわたしは目の端に
季ちがいの早贄とされた
わたしの春を見ていた
雪から突き出た枯草や
裸の樹々の黒い血管に
現実を直視する それは
一枚の写真を撮るのとそう変わらない
時代のことも自分のことも
本当にわかるのはずっと後
途切れなく移り変わり続くもの
その刹那の断面
傷口はふさがるものだろうか
否 時を経て膨れ上がり
いまや花開く
雪野に燃える罌粟ひとつ
見つめかえす瞳の胡乱さ
ああ生きて来てよかった
死にたいと思えるほど
おのれを貪り咀嚼する
いのちは自滅する炎
そのぎりぎりの揺らめき
(2025年12月13日)
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