ガリラヤ郷愁/石垣憂花
教室で心くだいた
日々も過ぎ
今日はすずろな心地です。
いまや厚い雲壁の鎖はとかれ
世界はつめたく
何も教えてくれません。
それは幸いなるかな…
死海のほとり辺は
ここなら
スイセンの植え込みで…
いま立ち止まって黙っていると
私のかすかの信仰が
胸の奥で鳴っています。
見知らぬ路地は
ひとつではなく
気づけばしずかに
何もわからないまま
礼拝堂のニスのかおりの
列車を探して歩いているのです。
シオンの丘を吹き抜ける風や
この夜旅立つ列車が
私を待っているけれども
私はここでただしく立っています。
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