林檎、あるいは生贄の友達/牛坂夏輝
 
林檎の内部には
乾いた正常な絶望があり
その鏡の
理想化された煙の海辺で
きみの通過できない空間が
雨に熱狂的な暗示を加えている

雨は吟味された言葉の正義と連続性
そして消費された壮麗な顎たちの歴史を振り返る

歴史は田園に加入した鸚鵡の寓話である

ぼくが触れると
林檎は即座に
白い穿頭術の劇場へと変わり
音のない完璧な地層では
きみの永久歯が
処刑の遍歴を続けている

たとえば寓話の内面に二人の毛深い英雄がいる

彼らには不条理な
裸体のような闇が見えないため
乱入する大理石の村人
侮辱された隠者の窓枠などに
あらがう術が一切ない
そのよう
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