母さんはね(修正版)/板谷みきょう
「母さんはね……てっきり、お前は」
言葉が続かなかった。
いつものように、ふくれて、泣いて、やがて眠ってしまうのだと。
明日の朝には「おはよう」と言ってくれるものだと。
本気で、心の底から、そう信じ込んでいた。
「それなのに、お前ときたら……今日は……」
声にならない声が喉で崩れた。「眠り方を……間違えたんだね」 わたしたちの声の届かない場所で。 わたしたちが振り返らなかった影の中で。 たったひとりで、小さな胸を抱えて。
机の上の『にんじん』が、薄い頁を広げたまま、わたしたちの代わりに、息子の苦しさをずっと、ずっと知っていた。
※原作の歌詞「母さんはね」を短編小説に修正しました
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