越冬サナギ/
花野誉
散歩の帰り道
ガス会社のフェンスに
ひとさし指先ほどの
緑のサナギ
アゲハの類か
細い指先で畳まれた
葉っぱのようで、
その美しさを観察する
雨風を凌げるものなど
周りに何もない
ぴんと張った
白い二本の帯糸
命綱のように
たった一人で
こんなところに
調べると
フェンスごと移すか
屋根をつけるしかない
連れては帰れない
──えらいもん見つけてもうたな
しゃあないなぁ
春まで毎日
この道を歩いて
見にくるから
がんばるんだぞ
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