小さなメモふたつ/由比良 倖
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僕の大好きなピアニストであるグレン・グールドのリズムは、僕を瞑想に誘うし、彼が見ているのは、この世の先の空の光であり、宇宙だという気がする。アニー・フィッシャーは割に好きで、彼女はコンサートホールに森そのものを持ち込んでくれるピアニストだ。彼女の森を、そのまま体験してみたかったな、と思う。
森と言えば、やっぱりニック・ドレイクを聴いていても、彼の音楽が僕の心に持ち運んできてくれるのは、森の情景だという気がする。何故か海じゃないし、山でも砂漠でもない。ニックは森の人だと思う。彼はいつでも木陰でギターを爪弾き、森の声で歌うミュージシャンだ。僕はいつでもニックの森で彷徨える。彼の窓からはいつも優
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