灰色の鬼(修正版)/板谷みきょう
り、ぽつり、灯る頃、雪が静かに降り始めました。その雪は白いのに、どこか温かく、鬼の影をそっと包み隠すようでした。
そして、ようやく村の入り口に辿りついた時、どこかの家の戸が開き、親子の声がしました。
その瞬間です。
――鬼の胸の灯は、消えることも、強く燃えることもせず、ただ涙に変わる手前の、あたたかい余韻だけを残しました。
鬼は、なにも壊さず、なにも奪わず、ただ静かに村を離れました。帰る場所を持たぬ者だけが選べる、静かな終わり方でした。
山へ戻る道すじで、風はもう歌いません。ただ、獣たちの沈黙だけが、灰色の鬼の後を、深い雪の上にそっとついて行きました。雪明かりの中、灰色の鬼の背中は、まるで最初から、誰にも見つけられぬ影だったかのように、細くなり、やがて風にまぎれて――そっと消えて逝きました。
ただひとつ。雪の上には、あの子がふり返った瞬間の、“もしもの光”だけが、鬼の通ったあとに、いつまでも静かに残っていました。
※原作「灰色の鬼」を修正しました
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