竹と朝顔(修正版)/板谷みきょう
 
朝顔が知らないうちに、ひそやかに蔓をのばしていたので、
庭の人は一本の竹をそっと添え木にたててやりました。

その晩のことです。

夜は早くからしんとして、星はどれも遠くで息をひそめ、
虫の声だけが、細い銀の糸のようにあたりにひらひらしていました。

朝顔は生まれつきのはにかみ屋でした。
風がそっと触れても、葉をすぐに丸めてしまうくらいの、
とてもおとなしい花なのです。

けれども添え木に立てられた竹は、
どこか南の山風の名残を思わせるような、明るく朗らかな声で話しはじめました。

「ねぇ、朝顔さん。
僕は今でこそ、こんなふうに黄色くなり、
節もすっかり歳をとって
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