虹の指輪(あぶくの妖精の話)/板谷みきょう
毎日、浜辺に少年が座るようになったのは、いつの頃からだったのでしょう。
秋の空はどこまでも澄み、風はもう冬の気配をまとっていました。
ただ、寄せては返す波だけが、ほんのすこしあたたかく聞こえていました。
少年は海を見つめ、胸の奥で小さな祈りをくり返しました。
――あの娘が、どうか幸せでありますように。
その幸せが、そっと僕の幸せにも重なりますように。
祈りは静かな重みを帯び、海の底へ沈んでゆきました。
そこで暮らす、あぶくの妖精は、その光にふれたとたん、胸の奥がふるえました。
ただひとつ、この願いを叶えてあげたい――。
禁を破ると知りながら、妖精は
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