狐の見た幻/板谷みきょう
 
虹の欠片をあぶくの妖精から授かった少年の胸には、小さな幸福の光がひそやかに灯っていました。


その光は、波間にささやかに揺れ、海辺の生きものたちにも静かに届いていたのです。
狐は、その輝きをひと目見ただけで、胸の奥が痛むほど羨ましく思いました。


「自分も、あの光を手にしたい……」
狐は少年に化け、同じようにあぶくの妖精から虹の欠片をもらおうと海辺へ向かいました。


しかし、化けていることは、海の清らかな流れに、そっと知られてしまったかのようでした。


冷たい波に引きずり込まれ、もがく狐の小さな影は、やがて抱かれるように静かに沈んでいきました。
そのとき、水底
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