沼の守り火(河童三郎の物語)/板谷みきょう
が“星になった神さま”と信じて拝む三郎の体は、誰も知らぬ奥山の湿地で、静かに、確実に、冷たくなっていたのさ。
龍神に命を捧げたあと、三郎の亡骸は、誰にも看取られることなく、雨に打たれ、泥にまみれ、横たわっていた。
肉はゆっくりと形を失い、腐乱が始まっていき、その身からは、夜風に溶けるような哀しい悪臭が立ち上り、湿った土を静かに犯していった。
美しいと信じられた犠牲の裏にあるのは、目を背けたいほどの孤独な真実であった。三郎はただ、自分の沼を守りたかっただけ。その純粋な願いは、村人には「神の救い」として、温かく、美しく語り継がれてゆく。
しかし、三郎の本当の姿を
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)