沼の守り火(河童三郎の物語)/板谷みきょう
「そうだべさ……でも、三郎がなんとかしてくれるだわな。あの子、わしらを放っておくような、薄情なもんでねぇはずだ」
三郎の存在は、希望の象徴でもあった。しかし、ダム計画の進行は止まらず、村人たちの心に、希望と絶望の緊張を積み重ねていったんでございます。希望にしがみつく集落の者たちと、ダム賛成派の者たちとの間には、深い溝が刻まれていったとさ。
4. 龍神との対話
三郎は、幾日もの夜をかけて、龍神の住むとされる深い谷にたどり着いた。そこは、常に湿った岩に水が滴る音と、湿った土の匂いが充満し、遠くの滝のとどろきが、まるで大きな生き物の呼吸のように響く場所であった。
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