沼の守り火(河童三郎の物語)/板谷みきょう
度と氾濫せぬ」
村人は震え、龍神の声だと悟り、一斉に額を地に押しつけて祈った。「なむ、なむ、なむ……」
厚い雲は裂け、夕暮れの空に、濡れた一つ星がぽつりと灯ったとさ。それは、まるで三郎の小さな瞳のようであったかもしれぬ。
「ありゃあ……三郎だ。沼を護った三郎が、星になったんだべな。村を救う、尊い神さまに……」
爺と婆は、長年の苦難が溶けるように涙を浮かべ、何度も静かに手を合わせた。三郎は「村を救った尊い神」として、人々の都合の良い希望と信仰の中に、永遠の存在となったのでございます。
6. 三郎の本当のこと
―――だが、その頃。
人々が“
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