青い蛇と赤い葉/板谷みきょう
 
た。
激流は青蛇の体を打ちつけ、鱗を剥がし、誓いさえも水に溶かして流してしまいます。
やっとの思いで入り江にたどり着くと、海は黒い雲と稲光に覆われ、荒れ狂う嵐が待っていました。

青蛇は力尽き、そっとつぶやきました。
「私は……龍にもなれなかった。ただの、さみしい青蛇のままだった……」

入り江の岩陰で静かに生き延びた青蛇。
故郷へ戻る道は、もうありません。
屏風山の獣たちも、青蛇のことを忘れてしまいました。
森は何事もなかったかのように、季節を繰り返します。

「私という孤独が、この世界を変えることは、一度もないのだ」
その無関心が、青蛇の胸をさらに深い空洞で満たしまし
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