青い蛇と赤い葉/板谷みきょう
定められた暮らしで、誰もが満足していました。まるで世界という大きな家に安心して住むようでした。
しかし青蛇は違いました。
小鳥が楽しそうに歌うと、そっと近づきました。
「ねえ、君たちは、誰のために歌うの?」
小鳥たちは首をかしげます。
「誰のためでもないよ。歌いたいから歌うのさ」
冬ごもりの準備に忙しい熊を見て、青蛇は尋ねました。
「そんなに一生懸命働いて、何になるんだい?」
熊は面倒くさそうに答えました。
「何になるって? 冬を越すんだよ。それだけで十分だ」
仲間たちの答えは、青蛇の胸のぽっかりとした空洞に届きません。
遠く離れた岸辺に一人立つような、冷たくて重
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