青い蛇と赤い葉/板谷みきょう
 
ました。

ただひとつ。
毎年秋、紅葉の木から落ちた赤い葉が、ぬらくら川を伝い、静かな入り江まで流れてきます。
葉は、青蛇の苦しみを知りません。慰めでも便りでもありません。
ただ、水が流れ、葉が落ちる、冷たい偶然のくり返しです。

しかし青蛇は、その葉を見つめ、かすかな安らぎを覚えました。
「この葉は私を呼んでいない。でも、故郷から届くものだ」
遠い日の仲間たちとの小さな思い出が、胸の奥に光りました。

龍になっても孤独は消えない。
でも、故郷の思い出のように、小さなつながりを大事にすることだけが、世界と静かに繋がる道なのかもしれない――。

川は流れ、紅葉は今年も青蛇のもとへひっそり届きます。
青蛇は、英雄になることをやめ、ただのさみしい青蛇として、今日も入り江で孤独を抱きしめ、生き続けました。

※原作「もみじ」を修正しました
https://po-m.com/forum/i_doc.php?did=365169

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