リアル・ウィークエンド/汐見ハル
で起きてくれない
予定のない週末の惰眠は
痺れた腕、まぶたをもちあげる術を
おもいださなくてよくて
誰もいない週末のまどろみは
わたしがほんとうにひとりであることを
さみしくならない唯一の時間だ
食パンを生のままでかじる
耳だけは焼いたほうがおいしいけど
おかあさんの寝息がきこえる
あんまりきもちよさそうで
だけどみけんにしわがよっている
だから牛乳もあっためないで
紙パックに口をつける
鉢植えのひとつも置かない白い部屋で
わたしだけがたしかに
呼吸をしていることの不思議と安堵
もうすこし、日が傾いたころに
人気ない住宅街を抜けて
灯台みたいに輝くカフェに
カプチーノでも飲みにいこうと
つめたくなった枕の感触を頬でたのしみながら
もう何度めかわからなくなった
ゆるい眠りにひきこまれてゆく
(初出:蘭の会(http://www.os.rim.or.jp/〜orchid/)
2005年5月 月例詩集「週末」より。のちに改稿)
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