抒情詩 ?/岡部淳太郎
 
き、親子は泣きながら
死んでゆく。それでも世界はすべて抒情詩。悪ははび
こり、それへの正しい処罰もなく、わけのわからない
うちに時代はごうごうと流れ、積み上げてきた何かが
がらがらと崩れ、それらの事実は記録されては、うた
われる。世界はすべて抒情詩。いつかこんな光景を目
にしたことがあったと、予言のように語る者がいて、
そのかたわらで爆発音が聞こえ、人が斃れては死んで
ゆく。夢のようだ。鴉が鳴き、戦車が進む。すべては
この空の下で眺められ、宇宙からも観測される。すべ
ては抒 情詩。これらの悲惨の理(ことわり)すらも含んだ抒情詩。



(2022年3月)
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