海王星からの光の定期便/歌留多カタリ
 

握りしめた操縦桿をぐいっと下げ舵に転じた
稲妻の矢玉にブルブル震える方向舵
風圧に抗して膨らむ両翼
幸せの十字架の刻印をその胸腹にひるがえし
まっしぐらに薄明の半島めがけて裏返っていった

     ※

いま明け空と海のすき間に
捉えられた郵便機の機影が
砂浜をさまよう高校生の少女の耳もとに
乾いたエンジン音を撒きちらしていく

厚く盛り上がった死者たちの濡れた唇
だらりと垂れ下がる光のカーテン
ガタガタ震える遮風板に映りこんだ
つかの間の笑みが
濃い藍色の抜け落ちた水面をゆらめかせ
少女の肩の高さをかすめていった

機影は高浜海水浴場のはるか彼方

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