海王星からの光の定期便/歌留多カタリ
薄煙りの軍艦島を追い越していく
少女はそっと手を振って見送った
やがてしなやかな素足は波打ちぎわを駆けて
海王星からの光の定期便を拾い上げるだろう
そこには海王星の銀の水盤に光で書かれた
文字列が封印されているはずだ
ぼくらの中のもつれあった
糸くずを解きほぐすための
「さあきみも飛び立つんだよ いますぐに!
赤い網膜の奥で光り輝く
銀の翼の沈んでしまわぬうちに」
そよとも吹かぬ空間に
押し出されたかすかな声音
※
けれども今はもう
その声すら耳もとから遠のいて
吹き抜けていった
いくつもの季節風のはざまで
強く踏み潰したはずの足裏
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