全行引用による自伝詩。 09/田中宏輔2
 
う?
(ガデンヌ『スヘヴェニンゲンの浜辺』23、菅野昭正訳)

 質問と答えは大きな声、あたり一帯の沈黙のなかでは突飛な声で行われたが、しかし愚かさというのは大声で話すことを好むものなのだ。
(ガデンヌ『スヘヴェニンゲンの浜辺』23、菅野昭正訳)

 クリフォード・ブラッドリーは長い間待たされたにしてはかなりよく耐えていた。言うことにも矛盾はないし、毅然とした態度をとろうと努めていた。しかしすえたような恐怖の病菌を部屋の中まで持ちこんでいた。恐怖は人間の感情の中でもとりわけ隠し方がむずかしい。ブラッドリーの身体はひきつり、膝の上で手が落ち着きなく握ったり開いたりしていた。小刻みに震える
[次のページ]
戻る   Point(11)