全行引用による自伝詩。 09/田中宏輔2
 
離れたところからくっきりと明白にランチルームにすわっている自分の姿を見た。
(ウィリアム・バロウズ『裸のランチ』ホセリト、鮎川信夫訳)

 ミンゴラは雨戸の隙間からこぼれる淡い明け方の光に目をさまして、酒場にいった。頭痛がし、口の中が汚れている感じがした。カウンターの半分残ったビールをかっさらって、掘ったて小屋の階段をおり、外にでた。空は乳白色だったが、雨のあとの水たまりはもう少し灰色をおび、腐敗した沈殿物(ちんでんぶつ)でもできているように見えた。屋根の棟(むね)もゆがんで邪悪な魔法にかけられているように思える。町の中心部にむかうミンゴラの目の前から、犬がこそこそと逃げてゆく。裏返し
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