全行引用による自伝詩。 09/田中宏輔2
きれた部分があることを知らないわけではない。この女性はその部分に断固たる手つきでアイロンをかけ、きれいに繕ってしまうだけなのだ。
(P・D・ジェイムズ『わが職業は死』第三部・1、青木久恵訳)
美しいものはすべてそうだが、人の心を慰めると同時にかき乱す。強烈な力で内省を強いるのだ。
(P・D・ジェイムズ『灯台』第一部・3、青木久恵訳)
おばさんは食卓の上座に、シートンは末座に、そしてぼくは、広々としたダマスコ織りのテーブル・クロスを前にして二人の中間に坐っていた。それは古くてやや狭い食堂で、窓は広く開いているので、芝生の庭とすばらしい懸崖(けんがい)作りのしおれかけた薔薇の花とが
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