全行引用による自伝詩。 09/田中宏輔2
う。卵形の洞窟の中で力いっぱい弓なりになった舌も、ピンクのうねのある口蓋も、全部まる見えになるほど大きな口をあけて笑っている。探るのに一生かかりそうな奥深い心の底を息をのむような暗闇に、天の贈りものともいうべきつかのまの光があたったのだ──偶然のいたずらでほんの一瞬かいま見えた美しさが、長年にわたって磨きぬかれた巧まざる女の計算を覆い隠し、彼女をよりいっそうミステリアスに変身させてしまうとは。
(グレゴリイ・ベンフォード『相対論的効果』小野田和子訳)
子供の頃、オードリー・カーソンズは物書きになりたかった。物書きは金持ちで、有名だったからだ。
(W・S・バロウズ『おぼえていないときもあ
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