全行引用による自伝詩。 09/田中宏輔2
 
保護司はパセリを受け取ると(…)
(P・D・ジェイムズ『罪なき血』第二部・11、青木久恵訳)

(…)だが何も期待していなかったことが、あの瞬間の純粋さの一部を形成していたのだし、そのおかげで人が善良と呼んでいるらしいものに近づくことができた。彼は悲しむことの苦しさを忘れかけていたが、それが今舞い戻ってきた。(…)オーランドーの死(…)そして十年前の六月の柔らかな陽を浴びて彼と一緒に芝生を歩いた滑稽なスカートをはいた少女まで一緒くたに一つのもの悲しい郷愁の中に包み込んで、幅広く拡散していた。
(P・D・ジェイムズ『罪なき血』第三部・9、青木久恵訳)

 本を読みながら眠りこむと、言葉に
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