全行引用による自伝詩。 09/田中宏輔2
 
いないといいたいんですね」
 しかしエルグ・ダールグレンは心の底ではそうではないことを知っていた。そして何か別のことを心待ちしていたのだった。傷つきやすいものへの一瞥、女王も近づけない、彼が?自我?と名づけた本性への。
(フィリス・ゴットリーブ『オー・マスター・キャリバン!』26、藤井かよ訳)

 どうしようもないのは、彼女が自分を愛しており、自分も彼女を愛しているという事実だった。それなのに、なぜ自分たちはこんなふうに喧嘩別れをするはめになるのだろう?
 疑問が湧きおこる。ボズは疑問が嫌いだった。かれは浴室に入り、「オーラリン」を三錠飲みこんだ。多すぎる量なのだが。それからかれは腰をお
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