原爆息子/あおば
 
た青年が
進軍ラッパを吹くたびに
装甲自動車に轢かれる

血の色は赤だが吸い込まれて
いつもの土の色に変わる

死んでもラッパは離さない
のではなくて
離せないのだと
死後硬直の高みに立って
物を言う人たち

ふたたび起こる砂けむり
(大空の騎兵隊に囲まれて)
ひらけゴマの呪文を忘れ
立ち往生する戦艦ヤマト

水底に眠るたくさんの英霊が
見守る中で
(宇宙船)コロンビア号は静かに燃えつきた

議論にも始まらないことを議論するので
血の色は変わらないまま
農家のお上さんは
黙って手の甲の汗を拭う

納屋の内では原爆のような息子が一日中逆立ちしているから
腹が空いても帰れない




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