時代と罪/秋葉竹
 

都にイノシシが走る時代に
逃げるように新幹線で自然の土地へゆく

なんの意味もなかった無人の部屋
最後に一度だけみて終わる

終わるって言葉の意味は深いかな
タイトルをつけるなら『逃避行』

時が流れないことがないように
音が流れない場所がなかった都

都ではひとを愛することも愛されることも
お金でできるから堕ちてしまう夢もあった

別れの曲が耳奥で歌われているマルキュー
美唄という町の名の響きが好きになった夜



ようやく雲から白い光が射す波のように
だんだんと寒くなって秋は冬になる

都のうたを聴きながら駅へ向かう足は
まるで深夜の酔っ払いのよう縋る肩もない

内容なんて何処にもなかった都に
別れを告げるひとももういない都に

メッチャふざけた贅沢な時間だったなと
唇から漏れてしまうのはただの元気なうた

乾いた風が傷つけないように静かに吹く
忘れられない匂いが鼻腔をくすぐる

このテクノロジーだらけの街を去り
自然に帰ることを決めたさすらいの罪






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