白に転がる/泡沫の僕
誰かの暮らしが灯る
中途半端な暗闇を眺めていた。
それは突然眩むほどの灯りをたたえて
あっという間に通り過ぎた。
一瞬見えた、ただ白さだけが広がる空間。
崩れていく風景の中で、浮かび上がって見えた。
そこで佇む僕に、アイツが声をかけてきた。
ーー端っこの暗闇からこっそり忍び込む方が
きっと愉快だぜ。
ついでに何か一つでも拝借できたら
それはきっととんでもないお宝になる。
駐車場の車でも、机に置かれたボールペンでも
デカさも値段も関係なく、俺らにとって等しく価値がある。
端っこに転がる石ころを拾い上げた僕を見て
アイツはにやりと笑って言った。
ーーそうだ!それもお宝だ!
僕はそれを無造作に、広がる白に投げ入れた。
完全な白に、小さな黒が転がっていった。
戻る 編 削 Point(3)