白に転がる/泡沫の僕
 
誰かの暮らしが灯る
中途半端な暗闇を眺めていた。
それは突然眩むほどの灯りをたたえて
あっという間に通り過ぎた。

一瞬見えた、ただ白さだけが広がる空間。
崩れていく風景の中で、浮かび上がって見えた。
そこで佇む僕に、アイツが声をかけてきた。

ーー端っこの暗闇からこっそり忍び込む方が
きっと愉快だぜ。

ついでに何か一つでも拝借できたら
それはきっととんでもないお宝になる。

駐車場の車でも、机に置かれたボールペンでも
デカさも値段も関係なく、俺らにとって等しく価値がある。

端っこに転がる石ころを拾い上げた僕を見て
アイツはにやりと笑って言った。
ーーそうだ!それもお宝だ!

僕はそれを無造作に、広がる白に投げ入れた。
完全な白に、小さな黒が転がっていった。
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