誰も知らない(改訂版)/涙(ルイ)
 
駅のホーム ごった返す人ゴミの中
もうこの中にはいられない
どうすれば今日 会社へ行かなくて済むだろう
そう思っているうちに 自然に足が前に向いていた


通勤時間帯の事故 誰もが忙しなさそうに
電車遅延のアナウンスに舌打ちしている
たった今 人がひとり死んだことなんてどうでもよく
それよりも私たちは 
朝の会議に間に合うかどうかの方を気にしてしまう
震災や事故 戦争で亡くなった多くの犠牲者には手を合わせ祈ることができても
この電車を止めた自殺者はただの迷惑な存在でしかないのか
命は尊いものだったはずじゃないのか
それとも 生きることを諦めてしまったものには
それすら
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