その人/
雲野しっぽ
出会ったのは公園の芝生だった
不思議な笑顔で空を指差し
無は確かにあるだろう?と話しかけてきた
晴れたある日には
降り注ぐ陽射しの中で
いつも持っているトランクの
小物類を少し広げて
溜息の入ったキラキラ光る小瓶や
咳払いの染まる秋色のハンカチ
苦笑で割れた手鏡などを
楽し気に見せてくれた
薄暗い雨の日には
父の無意識に殺され続けた僕の心を
ちょっとの間見つめてから
直せないけど笑ってあげると言ってくれた
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