全行引用による自伝詩。 07/田中宏輔2
 
の脳裡にあった記念碑を破壊したとしても、そんなことはどうでもいい。なぜなら、その記念碑は彼女自身の外側にあるものだから。この男の考えや思い出が彼女自身の外にあるのと、同じことだ。そして、自分の外側にあるものなど、すべてどうでもいいではないか。
(ミラン・クンデラ『年老いた死者は若い死者に場所を譲ること』14、沼野充義訳)

 ハヴェル先生は、伝聞や逸話もまた、人間そのものと同じく老化と忘却の掟に従うものだということをよく知っていた。
(ミラン・クンデラ『ハヴェル先生の二十年後』3、沼野充義訳)

 彼女が歩くとき、あの脚がまさしく何かを語っていることにもう注目していたのかね? きみ、あ
[次のページ]
戻る   Point(10)